交通事故で遷延性意識障害(植物状態)になられたときの注意点
交通事故によって遷延性意識障害となってしまったとき,被害者の方やそのご家族には,将来にわたって極めて大きな精神的な負担や経済的な負担が発生することになります。
そのため,ここでは,遷延性意識障害になられた方とそのご家族の方が,交通事故の損害賠償請求をする際に,気を付けていただきたいことについて,まとめさせて頂きました。
遷延性意識障害に該当する6つの要件
まず,「遷延性意識障害」についてですが,「遷延性意識障害」とは,いわゆる「植物状態」のことをいいます。具体的には,次の6つの項目を,3か月以上にわたって,満たす必要があります。
- 自力移動不能
- 自力摂食不能
- 糞便失禁状態
- 意味のある発語不能
- 簡単な従命以上の意思疎通不能
- 追視あるいは認識不能
成年後見制度を利用する必要がある
被害に遭われた方が遷延性意識障害となってしまった場合には,自分自身で損害賠償請求をするための判断能力がないため,成年後見制度を利用する必要があります。
成年後見制度を利用するためには,家庭裁判所に成年後見人の選任を申請します。そして,家庭裁判所から選任された成年後見人が,被害に遭われた方の代わりに,相手方に対して損害賠償請求をすることになります。
なお,成年後見人の選任手続きについても,当事務所は,ご依頼頂ければサポートすることができます。
慰謝料について
遷延性意識障害により自賠責の後遺障害等級1級が認定された場合に,自賠責保険からの慰謝料の支給額は、後遺障害が要介護か否か、養うべき家族の有無によって1100万円~1800万円までといわれています。
これに対して,弁護士(裁判)基準における後遺障害慰謝料は,1級1号の場合で2800万円になります。さらに,これに加えてご家族の受ける精神的苦痛について,近親者の慰謝料請求が認められる可能性があります。
そのため,弁護士に依頼をして弁護士(裁判)基準で交渉をした方が,貰える金額が大きく変わる可能性が高いです。
逸失利益について
逸失利益とは,交通事故によって傷害を負った結果,今後労働ができなくなることによって失った利益のことをいいます。遷延性意識障害になってしまいますと労働能力を100%失ってしまう方がほとんどと思いますので,逸失利益の金額も多額となる傾向にあります。
ただし,自賠責の支払限度額は慰謝料を含めても4000万円となっていますので,十分に逸失利益を賠償される可能性は低いです。
そのため,弁護士(裁判)基準で交渉をした方が,総額が増える可能性が高いです。
介護費(将来付添費)について
遷延性意識障害となってしまった場合には,将来,介護を受ける必要があります。そのため,将来の付添費を請求することができます。これは,通常,以下の計算式で計算されます。
日額8000円(弁護士(裁判)基準)×365日×介護の期間の年数に対応する中間利息の控除に関するライプニッツ係数
まとめ
以上のとおり,遷延性意識障害になってしまった場合の損害額は多額になります。そして,弁護士にご依頼頂ければ,ご依頼されない場合に比べ有利な条件で交渉をすることができますし,請求する費目についても漏れがありません。
ご家族が遷延性意識障害になられた場合,精神的な苦しみや経済的な負担は,将来にわたって生じるものとなります。加害者の保険会社は,できるだけ支払う保険金を低額におさえようとすることもありますので,すぐに判断して示談に応じることはせず,まずは弁護士にご相談いただければと思います。